オプション取引は「コール」と「プット」の2種類だけ
オプション取引の話になると、専門用語の多さに身構えてしまうかもしれません。でも、オプションそのものの種類はたった2つしかありません。「買う権利」であるコールオプションと、「売る権利」であるプットオプションです。
そして、それぞれに「買う人」と「売る人」がいます。つまり取引のパターンは、2種類×2つの立場で全部で4つ。この「4つの基本形」さえ押さえれば、オプション取引の全体像はほぼつかめたと言えます。逆に言えば、どんな複雑な戦略も、この4つの組み合わせでできています。
この記事では、コールとプットの違い、買い手と売り手の立場の違い、そして4つの基本形について「どんなときに使うのか」「利益と損失はどんな形になるのか」を損益図のイメージと一緒に解説します。
まず結論を表にまとめます。詳細はこのあと順番に説明します。
| 項目 | コールオプション | プットオプション |
|---|---|---|
| 権利の内容 | 決められた価格で「買う」権利 | 決められた価格で「売る」権利 |
| 買い手が得をする場面 | 株価が上がったとき | 株価が下がったとき |
| 買い手が払うもの | プレミアム(権利の代金) | プレミアム(権利の代金) |
| 売り手が受け取るもの | プレミアム | プレミアム |
そもそもオプションとは「将来の売買の権利」
オプション(option)には「選択権」という意味があります。オプション取引で売買しているのは株そのものではなく、「将来、決められた価格で株を売買できる権利」です。
権利には、あらかじめ次の2つが決められています。
- 権利行使価格(ストライクプライス):いくらで売買できるかという約束の価格
- 満期日(限月):その権利がいつまで有効かという期限
たとえば「1か月後まで、A社の株を100ドルで買える権利」がコールオプションです。1か月後の株価が120ドルになっていれば、この権利を使って100ドルで買えば得をします。逆に株価が80ドルまで下がっていれば、わざわざ100ドルで買う必要はないので、権利は使わずに捨てられます。権利は「使うかどうかを選べる」もので、義務ではない、というのが買い手にとっての大きな特徴です。
この「権利を使う」ことを権利行使、「権利を使う価格」を権利行使価格と呼びます。用語はこの2つだけ覚えれば、コールとプットの説明は最後まで読み進められます。

コールオプション=「買う権利」
コールオプションは、原資産(対象の株式)を、満期までに権利行使価格で買うことができる権利です。
値上がりしそうな株について、「今のうちに買う価格だけ約束しておきたい」というときに使います。ここからは具体例で見ていきましょう。以下は説明のためのモデルケース(例)です。
株価100ドルのA社株について、権利行使価格100ドル・満期1か月のコールオプションを、プレミアム(権利の代金)3ドルで買ったとします。
- 満期に株価が115ドルまで上がっていたら:権利を行使して100ドルで買い、その株は市場では115ドルの価値があります。差額15ドルから、最初に払ったプレミアム3ドルを引いた12ドルが利益です(1株あたり)
- 満期に株価が100ドルちょうどなら:権利を使っても得はなく、払ったプレミアム3ドルがそのまま損失になります
- 満期に株価が90ドルまで下がっていたら:権利は使いません。損失は払ったプレミアム3ドルのみ。株価がどれだけ下がっても、損失はこれ以上増えません
ポイントは2つです。1つ目は、買い手の損失は払ったプレミアムの範囲内に収まること。2つ目は、株価が上がれば上がるほど利益が伸びることです。損益分岐点は「権利行使価格+プレミアム」で、この例では103ドル。株価がこれを超えて初めて利益になります。

プットオプション=「売る権利」
プットオプションは、原資産を、満期までに権利行使価格で売ることができる権利です。コールの反対で、株価の下落に備えたり、下落で利益を狙ったりするときに使います。
株価100ドルのA社株について、権利行使価格100ドル・満期1か月のプットオプションを、プレミアム3ドルで買ったとします。
- 満期に株価が85ドルまで下がっていたら:権利を行使して100ドルで売れます。差額15ドルからプレミアム3ドルを引いた12ドルが利益です
- 満期に株価が100ドル以上に上がっていたら:高い価格で売れる市場があるのに、わざわざ100ドルで売る理由はありません。権利は捨てて、損失はプレミアム3ドルのみです
プットは「保有株の保険」としてもよく使われます。株価が急落しても、プットの権利行使価格で売れることが保証されるので、下落局面での損失を抑える役割を果たします。火災保険と同じで、「何も起きなければ保険料(プレミアム)は掛け捨てになるが、万が一のときに守ってくれる」というイメージです。
コール買いと同様に、プット買いも損失はプレミアムまでに限定され、予想どおり大きく動いたときの利益が伸びる構造です。損益分岐点は「権利行使価格−プレミアム」で、この例では97ドルです。

買い手と売り手では、立場がまったく違う
ここまで説明してきたのは、すべて「権利を買う人」の話でした。取引には当然、その権利を売る相手がいます。そして、売り手の立場は買い手と正反対です。この非対称性こそ、オプション取引を理解するうえでいちばん大事なポイントです。
- 買い手:プレミアムを払って「権利」を持つ。権利を使うかどうかは自分で選べる。損失はプレミアムまでに限定される
- 売り手:プレミアムを受け取る代わりに「義務」を負う。買い手が権利を行使したら、約束どおりの価格で売買に応じなければならない
売り手の損益は、買い手の損益をそのまま裏返した形になります。コールの売り手は、株価が上がらなければ受け取ったプレミアムがそのまま利益になりますが、株価が大きく上がると損失が膨らみます。プットの売り手は、株価が下がらなければプレミアムが利益になりますが、株価が急落すると大きな損失を被る可能性があります。
| 立場 | 払う・受け取る | 損失の上限 | 利益の上限 |
|---|---|---|---|
| 買い手 | プレミアムを払う | 払ったプレミアムまで | 大きく伸びる余地がある(コール買いは理論上無限、プット買いは株価がゼロになるまで) |
| 売り手 | プレミアムを受け取る | 大きくなる場合がある | 受け取ったプレミアムまで |
「買い手は損失限定・利益は大きく、売り手は利益限定・損失は大きい」。この関係は損益図でも確認できます。売り手の損益図は、買い手の損益図を上下反転させた形になります。


では、なぜ損失が大きくなる可能性があるのに、オプションを売る人がいるのでしょうか。それは、オプションは満期を迎えると価値がゼロになることが多いからです。買い手の予想が外れれば権利は紙くずになり、そのたびに売り手はプレミアムをまるごと利益にできます。売り手は「負けるときは大きく負けるが、勝つ回数は多い」という戦い方をしているわけです。この時間の経過とともにオプションの価値が減っていく性質については、プレミアムの記事で詳しく解説します。

4つの基本形を整理する
コール/プット × 買い/売りの組み合わせでできる4つの基本形を、それぞれ「どんな相場観のときに使うか」という視点で整理します。
1. コール買い(ロングコール)
株価の上昇を予想するときの形です。損失はプレミアムまで。株を買うより少ない資金で、大きな値上がりの恩恵を狙えます。決算発表前など「大きく上がりそうだが、確信までは持てない」場面で使われます。反面、株価が横ばいでも時間の経過で価値が減っていくため、「当たったのに利益にならない」ことも起きやすい形です。
2. プット買い(ロングプット)
株価の下落を予想するとき、または保有株の下落ヘッジ(保険)に使う形です。損失はプレミアムまで。空売りと違い、株価が予想に反して上がっても、損失はプレミアム以上に膨らみません。
3. コール売り(ショートコール)
株価が上がらない(横ばい〜下落)と予想するときに、プレミアム収入を狙う形です。利益はプレミアムまで。ただし株価が大きく上がると損失が膨らむため、現物株を保有した状態で売る「カバードコール」という形で使うのが一般的です。
4. プット売り(ショートプット)
株価が下がらない(横ばい〜上昇)と予想するときに、プレミアム収入を狙う形です。権利行使されると権利行使価格で株を買う義務が生じるため、「その価格なら買ってもいい株」に対して、買う資金を用意したうえで売る「キャッシュセキュアードプット」という形がよく使われます。
| 基本形 | 予想する相場 | 利益の形 | 損失の形 |
|---|---|---|---|
| コール買い | 上昇 | 株価上昇で伸びる | プレミアムまで |
| プット買い | 下落 | 株価下落で伸びる | プレミアムまで |
| コール売り | 横ばい〜下落 | プレミアムまで | 株価上昇で膨らむ |
| プット売り | 横ばい〜上昇 | プレミアムまで | 株価下落で膨らむ |


米国株オプションは「1枚=100株」が単位
最後に、米国株オプション特有のルールを1つだけ押さえてください。オプション1枚は、原資産の株式100株分を表します。
注文画面に表示されるプレミアムは「1株あたり」の価格です。たとえばプレミアムが3ドルと表示されていれば、1枚買うときの実際の支払額は 3ドル×100株=300ドル です。「思ったより金額が大きい」と驚かないためにも、注文の数量は「枚数」であり、金額は常に100倍で考える、という感覚を持っておきましょう。
また、1枚のオプションを買うことは、100株分の値動きに連動するポジションを持つことでもあります。小さい金額で大きな値動きに触れられるのがオプションの魅力である一方、値動きの影響も100株分になる点は忘れないでください。
まとめ
- オプションは「買う権利」のコールと「売る権利」のプットの2種類
- 買い手はプレミアムを払い、損失はその範囲内。売り手はプレミアムを受け取り、買い手の権利行使に応じる義務を負う
- 4つの基本形(コール買い/コール売り/プット買い/プット売り)の使い分けは「どの相場を予想するか」で決まる
- 損益図の形で覚えると、相場観と戦略を結びつけやすくなる
- 米国株オプションは1枚=100株。表示価格(プレミアム)は1株あたりなので、実際の金額は100倍
コールとプットの全体像がつかめたら、次は「その権利の値段=プレミアムがどう決まるのか」を学ぶのがおすすめです。あわせて、実際の取引を始める手順も確認しておきましょう。




